立教大学・空閑ゼミのエコデザイン訪問記 #1——「人、モノ、カネ」の「質」を豊かにしよう

皆さん、はじめまして。立教大学コミュニティ福祉学部で教員をしている空閑厚樹(くが・あつき)です。
15年前、立教大学に着任した年から、縁あって学生たちと小川町に通っています。

エコデザイン会長の長倉正昭さんから、新社屋に新設するコミュニティ・スペースの活用方法について一緒に考えませんか、とお誘いを受けてから私のゼミで話し合いを重ねてきました。

エコデザインの新社屋の完成は2021年の秋ごろ見込みとのことです。それまでに、エコデザインの方々や小川高校の生徒のみなさん(地域活動を積極的に展開しています)、地域のNPOや行政の方々とも相談、協力しつつ準備を進めていくことになりました。

これから、このブログではその準備の過程を報告します。

 

「育ち方」に込めた想い

まず、このブログの新しいカテゴリーのタイトル「コミュニティ・スペースの「育ち方」」に込めた想いを説明します。このカテゴリーは、今回の記事作成にあたりエコデザインと協議し、新たなカテゴリーとして追加してもらいました。

日本語としてより自然な語感の「育て方」ではなく、「育ち方」としたことには理由があります。
「育て方」とすると育てる側と育てられる側という立場の違いが意識されます。しかし、私たちが目指すのはこのスペースが私たちの予測を超えて(そして時に外れて)展開して(育って)いくことです。

その過程を見守り、支えていくことで、このスペースの準備の過程、そして運営を通してここに関わる人も成長していける(育つ)ような場としたい、という想いからこのようなタイトルとしました。

エコデザイン社屋にて

 

空閑ゼミと小川町

私のゼミのテーマは地域活性化です。持続可能な暮らしやコミュニティのありかた、そしてそれを支える価値観を考えることを通して学んでいます。

冒頭にも書いたように、私たちはコミュニティ福祉学部で学んでいます。「福祉」というと、生活に困っている人を助ける学問、実践領域であるとのイメージをもってしまいますが、「福祉」の本来の意味は「しあわせ」です。

何をもって「しあわせ」とするかは時代や状況の価値観によって変化します。たとえば、高度成長期においては所得が年々増え、家電製品を買い足し、マイカーやマイホームを持つことが「しあわせ」を意味していたかもしれません。そして、日本社会は、このような物質的な豊かさによってもたらされる「しあわせ」の実現に一定程度成功しました。

しかし、今、私たちはどのような価値観に基づいて「しあわせ」を考えていくのか問い直す時にあるのではないかと思います。

集中豪雨や酷暑などの異常気象は、ニュースとして知ることではなく実際に体験することになりました。これは年々深刻化しているようにも思えます。また、人口減少によって日常の暮らしの維持が難しくなるという、地域の直面する課題が「消滅可能性都市」として問題提起されたのは2014年のことです(日本創成会議)。これも依然として「待ったなし」で取り組まなければならない状態です。

これらの課題は、これまでの私たちの暮らしは持続可能ではないことを示しています。そして、持続可能な社会を目指すための目標として、国連の設定したSDGsと密接に関連しています。エコデザインが本社を置く小川町も、SDGsを参考にしつつ多様な地域活性化の取り組みを展開しています。

SDGsが、地域レベルでも地球レベルでも、共通の問題意識として共有されるに至ったということの意味は重要です。なぜなら、これまでの開発や発展の前提となっていた価値観の見直しを求めているからです。

これまで地域活性化ということで想定されていたのは「人、モノ、カネ」の行き交う「」を増やすということでした。そのための手段として、工場やショッピングモール、公共施設の誘致が考えられます。しかし、人口減少段階の日本において、また二酸化炭素排出量を抑えつつ暮らしの豊かさを求める必要がある現代において、この従来の方法や考え方をそのまま採用することはできません。

たしかに「人、モノ、カネ」の量を増やすことは重要です。しかし、それは「人、モノ、カネ」の「」を豊かにすることの結果として付随するものであって、目標ではないのです。

 

持続可能なコミュニティづくり

さて、エコデザインが新社屋で設置を予定しているコミュニティ・スペースは、小川町で行き交う「人、モノ、カネ」の質を豊かにする取り組みであると私たちは理解しました。

なぜならば、それはエコデザインの商品宣伝の場ではなく、地域に開かれた空間(スペース)であり、「自然と共存し且つ永続性のある人間社会を作りだす」こと(エコデザインホームページより引用)に関心のある人々――冒頭にも挙げたように、エコデザインの方々、小川高校の生徒のみなさん、地域のNPO、行政の方々――が交流し、ともに創りあげる場だからです。

その時、組織としてのエコデザイン社、製品としてのオゾン発生器、そしてコミュニティ・スペースは、持続可能なコミュニティづくりのための小川町の擁する地域資源ととらえることができます。

その運営のお手伝いをすることは、私のゼミで学ぶことと重なります。

ゼミでの活動は、まずインターネットに掲載されている情報をもとに、エコデザインについて調べることから始まりました。共同でコミュニティ・スペース運営に取り組むためには、パートナーとなるエコデザインについて知る必要があると考えたからです。

しかし、インターネットで入手できる情報だけでは限界がある、ぜひエコデザイン社を訪問し直接そこで働く人たちと交流したいという強い希望がゼミ生から出てきました。

通常、キャンパスの外に出て現場で学びを深めることを大学は推奨しています。座学では得られない多くの気づきを得ることができるからです。しかし今年度は新型コロナウイルス感染症対策が最優先されました。その結果多くの大学で講義がオンラインになり、私たちの大学も例外ではありませんでした。

新学期が始まった当初、そのような中で学外プログラムを実施することはできませんでした。しかし、夏に入り状況が落ち着いたタイミングで大学に申請したところ、十分な対策をとることを条件に、エコデザイン訪問が認められました。

 

今回の取り組み・エコデザインとの共同企画

これから、エコデザイン新社屋のコミュニティ・スペースがどのように「育って」いくか、その様子を報告していきます。この投稿から別途4回に分けて、エコデザイン訪問の記録を投稿します。これは、「三密」を避けるため、4回に分けて訪問を行ったからです(2020年8月28日、9月3日、9月9日、9月15日)。

その後、受け入れをしてくださったエコデザインのスタッフの方からふりかえりの投稿が続きます。なお、記録は活字によるレポートと併せて、2~4回目ではスマホを使った映像記録も掲載する予定です。

 

〈空閑ゼミの連載記事一覧(2020年度)〉

立教大学・空閑ゼミのエコデザイン訪問記 #5——2020年9月15日 立教大学・空閑ゼミのエコデザイン訪問記 #4——2020年9月9日 立教大学・空閑ゼミのエコデザイン訪問記 #3——2020年9月3日 立教大学・空閑ゼミのエコデザイン訪問記 #2——2020年8月28日

 

(2021年9月22日:記事一覧について2020年度のものと表記しました。)
(2021年6月10日:第5回記事へのリンクを追加しました。)
(2021年6月2日:第4回記事へのリンクを追加しました。)
(2021年5月10日:第3回記事へのリンクを追加しました。)
(2021年2月16日:連載記事一覧のリンクを追加しました。)