皆さんこんにちは 。
エコデザイン株式会社のタムラです。
徳山大学元学長の杉光英俊先生のインタビュー後編をお届けします!
(インタビュー日:2020年7月9日)
目次
杉光英俊先生のご紹介
杉光 英俊(すぎみつ・ひでとし):東京理科大学理学部化学科 卒業後、上智大学理工学部 助教授、徳山大学経済学部 教授を経て、2001年3月より第7代徳山大学学長(2010年3月任期満了)。理学博士。著書に『オゾンの基礎と応用』(光琳)、『オゾン利用浄化技術の実際』(サンユー書房)など。『オゾンの基礎と応用』は、オゾンの活用法を体系的に記した業界必携書。徳山大学退職後はさいたま市で「ネコカフェルディ」を営む。ルディは2021年秋に惜しまれつつ閉店となったが、その後はYouTubeで動画を発信している。
〈インタビューの前編はこちら〉
【インタビュー】杉光英俊 先生(元 徳山大学学長)〈前編〉——いろんなことが役に立つし知っていて損はしないから、勉強は面白い
『オゾンの基礎と応用』を執筆することになった経緯と思い
タムラ
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徳山大学は経済学部なので、前にいた上智大学のような研究は難しい。しかし産業にオゾンを役立てるということを活動も含めてやろうと計画していました。その時、実際に東京の方で作っていた日本工業技術振興協会の「オゾン高度利用技術委員会」と山口県の依頼による「山口県オゾン研究会」では環境問題を含めた新業務をやることになっていました。ならちょうどいいと、これまでのオゾンの研究をまとめようということで研究叢書「オゾン」を執筆しました。
そういう経緯なので、元は研究に関するものが中心ですが、この本を譲ってほしいという人が相次いで、それなら出版しようと研究叢書に尾ひれをつけて出版したものがこの『オゾンの基礎と応用』です。詳しい経緯は研究叢書の方に記載されています。
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1991年に現在の徳山大学経済学部に移り、今度は産業界にオゾンを役立たせることに力を注ぐこととなった。この意味で本書は専門的研究をやや控えめに、できるだけ実際に役立つように構成したつもりである。
出典:『オゾン』(杉光英俊・著、徳山大学研究叢書13、1995年、徳山大学総合経済研究所)
(中略)前述のように、塩素は有効な殺菌剤ではあるが、利用に伴って有害な塩素化合物が副生し、またその多くが環境に長く残留する傾向がある。一方、オゾンは塩素より強い殺菌力を持つが、短時間に分解するため取り扱いが難しい欠点があった。しかし、オゾンの分解生成物は無害な酸素であり、副生する化合物ほとんどはすでに環境に存在している酸化物である。このために、オゾンは環境にやさしい新時代の殺菌剤として注目されているわけである。オゾンの利用は水道に限らない。プール・水族館・養殖場・24時間浴槽などの水の浄化、トイレ・畜舎などの脱臭、食品・食品加工場の殺菌、IC基板の洗浄など、工業用から家庭用まで、さまざまに利用が進んでいる。
最近、オゾンの幅広い有効性が認められると同時に、オゾンに新規参入する企業が増えている。しかし、実際にオゾンを有効に利用するためには、オゾンに対する幅広い知識が必要である。技術的裏付けがないオゾン利用は、結果的にオゾンの有効性に疑問を抱かせる結果を招きかねない。そこで本書をまとめるにあたっては、単にオゾンの有効性を紹介するだけでなく、基礎的なデータをまとめて、開発者や利用者が機器装置の有効性、耐久性、安全性、経済性などを検討できるようにした。
出典:『オゾンの基礎と応用』(杉光英俊・著、1996年、光琳)
オゾンについての研究はまだ始まったばかりであり、意を尽くせなかった点も少なくないが、それらについては今後読者のご意見を得て改めてゆきたい。本書が新しい環境技術としてのオゾンの研究と適切な利用の普及に、少しでも役立つことができれば大変幸いである。
オゾンに関して印象に残っているエピソードについて
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詳しくはインタビュー記事をご覧ください。 【インタビュー】中室克彦 先生(摂南大学名誉教授)——自社の宣伝より、オゾンの正しい情報の発信を願います
叢書「ゴルフ場と地域開発」というのは全国的なリゾート開発についてグループで調査したものです。このような環境問題研究をバックに「環境科学」や「環境ビジネス」、「環境安全学」などの新講義を開設しました。
工業や経済の発展は環境にマイナスだと思われがちですが、そんなことはないんです。
環境中心、人間中心ではなくて、環境からのフィードバックを適切に取り入れることが大事で、どちらもやりすぎないことが一番かもしれませんね。
オゾンのこれからについて
しかし、有害なものを少しずつ、害が無いようにして使うというんじゃ、総量規制と同じでどんどん溜まっていくわけです。オゾンの研究を始めてすぐに、オゾンが排ガスをきれいにするのに役立つことを知りました。しかも副作用がないんです。だから、使ってもすぐ無害になっていくという意味で、オゾンはぴったりなんですね。そこに残らないのだから。
オゾンは酸素になって跡を汚さないということで、オゾンというのはもっと様々なことに使えるだろうし、使うようにしなきゃいけません。つまり、オゾンでやることによって、他のものを使わなくて済むようにそうならないといけない。そうなるべきだと。そういう信念を持ってます。今まで塩素を使ったりいろいろ他のもので酸化させているところにオゾンを使って酸化させる。こういうシステムを作り上げていかないといけない。
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オゾンの需要はどのくらい見込めるかの試算
既存の消毒・酸化剤の市場の一部がオゾンに転用されるとしてオゾンの将来需要を推定し、表1-15に示した。酸化剤の使用実績データは1995年版科学工業年鑑による。オゾン需要量の予測は次式により算出した。酸化剤の強度によらず同じモル数が使用されるとし、転用%は対象により5~80%を仮定している。
オゾン需要 = 酸化剤量 × 転用% ×(オゾン分子量/酸化剤分子量)
転用率は5~80%を仮定(塩素の50%、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素の80%)
この結果、オゾン全体の生産規模は現在の年間2万トンから45万トンにまで拡大すると見込まれる。この量は現在の過酸化水素の年間生産量14万トンの3倍に相当する。
上で産出されたオゾンの需要予測の分布を図1-9に示した。これによると、需要の大半がパルプ、紙類への適用となっていることがわかる。
出典:『オゾン利用浄化技術の実際』(米内伸一・発行、1999年、サンユー書房)
液体塩素 | 次亜塩素酸ソーダ | 過酸化水素 | オゾン 需要量 [トン/年] |
|||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
出荷先 | 出荷量 [トン] |
転用 [%] |
オゾン [トン] |
出荷量 [トン] |
転用 [%] |
オゾン [トン] |
出荷量 [トン] |
転用 [%] |
オゾン [トン] |
|
鉄鋼・非鉄 | 6564 | 5 | 222 | 15011 | 80 | 925 | 1147 | |||
アルミナ・ガラス | 396 | 0 | 0 | 1437 | 80 | 89 | 89 | |||
人絹・スフ | 425 | 20 | 57 | 10330 | 80 | 636 | 13875 | 80 | 29637 | 30331 |
織物染色 | 939 | 50 | 317 | 24619 | 80 | 1517 | 1834 | |||
紙・パルプ | 130386 | 50 | 44070 | 180445 | 80 | 11115 | 51900 | 80 | 110858 | 166044 |
食品 | 811 | 5 | 27 | 26212 | 80 | 1615 | 764 | 80 | 1632 | 3274 |
上・下水道 | 25040 | 70 | 11849 | 219090 | 80 | 13496 | 25345 | |||
用水・廃水 | 2402 | 70 | 1137 | 54535 | 80 | 3359 | 4496 | |||
電機・電子 | 2496 | 30 | 506 | 3759 | 80 | 232 | 738 | |||
医・農薬 | 11127 | 5 | 376 | 49605 | 80 | 3056 | 3432 | |||
化学工業 | 634177 | 5 | 21435 | 286267 | 80 | 17634 | 38740 | 80 | 82749 | 121818 |
その他 | 61864 | 5 | 2091 | 189875 | 80 | 11696 | 34454 | 80 | 73594 | 87381 |
オゾン合計 | 82089 | 65369 | 298470 | 445927 |
表1-15 酸化剤・消毒剤の年出荷量と年間オゾン需要量
出典:『オゾン利用浄化技術の実際』(米内伸一・発行、1999年、サンユー書房)
※表が横に長いため、横方向にスクロールできます
図1-9 オゾンの将来需要予測
出典:『オゾン利用浄化技術の実際』(米内伸一・発行、1999年、サンユー書房)
オゾンの将来需要予想。紙・パルプ類を中心に転用可能な余地がある
タムラ
だから有毒なやつを使ってから残った毒をどうにか後処理するんじゃなくて、もともと毒が残らないやつ(オゾン)を使うと。
タムラ
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そして、オゾンの濃度をシビアに考えすぎないほうがいいと。そうしないと他のもっとシビアなやつを見逃しちゃって、本当はそんなに問題じゃないものを問題にしかねない。そういうことなんですよ。
タムラ
在郷軍人病とオゾン
タムラ
それが在郷軍人病と呼ばれていて最初理由がわからなかった。だけど結局は原因はホテルの屋上にあるクーラーを冷やす散水機。その中の腐った水から細菌が拡散してそれが体の中に入ってしまった。それで死んじゃった。何人も。それを在郷軍人病というんですよ。
それは何するかというと一番に考えるのは消毒剤を入れればいいと。でもその消毒剤をその中に放り込むと消毒剤が噴霧されるということでしょう。これはまずいんですよ。だから噴霧されても問題がないやつを使わないといけない。そこで候補に上がったのがオゾン消毒です。
オゾンだったら消毒して、わーっと広がってもすぐになくなっちゃってオッケーだ。問題ない。ということでアメリカは米国中央研究所を始めとして、オゾンを使いなさいと言ったんです。
私は日本でも、エアコンの空気には微量のオゾンを混ぜるべきだと主張しているくらいです。そうすれば、微量のウイルスなんかはオゾンを嫌がっちゃうから安心だと。現状はそういう対策を取らずにそのまま出しているから、エアコンの中にあるカビが増殖して、私たちはカビの胞子を全部吸い込んじゃうんですよ。
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学長就任中のエピソード
タムラ
福祉情報っていうのは意味がありまして、目が見えない人の一番の問題は情報の伝播です。口で言った言葉を手の情報の元にするとか、音にするとか。活字を拾って声でいうとか。福祉は情報の伝播が非常に重要になってくるのです。ただ、趣旨は悪くないんだけど、福祉情報っていう分野がほんとに失敗で、学生が、情報というカテゴリーに来たいという学生と、福祉に行きたいという学生は、全然違うカテゴリーになってしまいました。
タムラ
タムラ
福祉と情報っていうのはコネクション技術的に意義のあることだから、面白いんじゃないかと思いますね。ただ来る人は、福祉のやつは福祉でここは福祉だなと思って、情報のやつは情報で福祉なんか関係ないここは情報だと、福祉と情報の橋渡しができないということですね。
タムラ
私に言わせれば一番の基本は精神です。福祉をやる人間は、精神面でやっぱり“奉仕”の心が身体に染みつかなきゃだめです。福祉の技術で試験をしてどうのこうのって、規格基準がどうのこうのだってそんな話ばっかりしていました。精神も知らないで、行くとこないから来ましたみたいな連中が介護の世界に入ってしまったら、みんなが不幸になりますよ。だから福祉の技術よりも、精神論をやろうと言ってきました。
幻の旅行学部
タムラ
私が言っていたのは最初旅行業っていうのはいろんなところに家とかを見に行っていろんな所の人と話をして。いいことばっかりじゃないかと、語学が堪能になるしサービス精神は養われる。悪くないなぁと、歌も踊りもオッケーと。若いのにぴったりじゃないかなと言ったんだけども、就職先ですよって言われたときに確かにそうだなぁと。旅館とホテル、旅行業界しかないと。これはちょっと失敗でしたね。
文化を作りたかった
語学から何からいっぱいあるのだけど文化情報というのにしたかった。今考えると、まぁ福祉は世の中にとって役に立つ分野ではあるけど、相対として(文化情報は)必須のものじゃないですからね。山行ったり湖で遊んだり、海で遊んだり、芝居も花もお茶もそれぞれの意味はあるのだけど。
それがなきゃ、生きていけないというものではないんですね。
そういった意味では、田舎で文化って言われてもなぁって言われて、結局福祉情報になったのですが、悪くはないと思うけど、私が悪くないと思ったって受ける方が興味がないと、両方から素寒貧になっちゃったら困っちゃう。またそういった意味ではオゾン学部にした方がまだよかったです。
タムラ
まぁしかし絶対に失敗しないということは無いのです。失敗も成功のもとで、いろいろなことをやらないと失敗も生きてこない。いろいろなことをやってみるものですね。やらなきゃわからない。やってみるとわかる。駄目だったっていうのもわかるし、なぜ駄目だったかということもわかる。エコデザインさんがどこまでオゾンやるというのか知らないけれど、やってみればいいんじゃないかな。意味はあると思います。
タムラ
インタビュアーのひとこと
オゾン科学の第一人者、杉光先生へのインタビュー(後編)です。
後編では、オゾンに関するエピソードなどについて語っていただきました。現在はネコカフェルディのルディパパとして活躍されておりますが、本の執筆、オゾン学会の運営やはたまた学長就任など、様々な経歴を持っていらっしゃいます。特に名著「オゾンの基礎と応用」は、オゾンを実際に使う上で困った時、これを読めば必要なことは大概載っています。
オゾンという物質はまさに経済発展と環境配慮を両立できる物質で、秘めている可能性は無限に広がっています。弊社は、現在はほとんどオゾンに関する事ばかりをやっていますが、その根底には「エコ技術」を「デザインする」という理念があります。これからも私たちはオゾンを通じて環境問題に取り組んでまいります。
タムラ
番外編では、オゾン並みに無限の可能性を秘めている獣、ネコについてお送りします!
ネコカフェルディのネコちゃんたち——インタビュー 杉光英俊 先生〈番外編〉
(インタビュー内容は取材当時のものです。所属、業務内容などは現在では変更となっている場合があります。なお、ネコカフェルディは2021年秋に惜しまれつつ閉店となっており、その後はYouTubeでの動画発信が行われています。)
参考 ネコカフェルディ YouTubeチャンネルYouTube
〈杉光先生の連載記事はこちら〉
オゾンの殺菌作用は? 使われたオゾンはどうなる? オゾンを知ろう【杉光英俊の連載 #1】
(2022年5月9日:ネコカフェルディの閉店について記述しました。)
(2022年4月22日:CSSを修正しました。)
(2021年4月14日:番外編へのリンクを追加しました。)