【用語解説と実験】オゾン消毒のやり方と、指標「CT値」の意味(動画解説)

皆さんこんにちは。エコデザインの長倉正弥です。

今回の記事は、オゾンガスを室内に放出することによって室内の空気中や物品に付着した菌やウイルスの不活化を行う「オゾン消毒のやり方と、オゾン消毒の効果の指標となる「CT値について解説したいと思います。なお、オゾン消毒はオゾン燻蒸(くんじょう)とも呼びます。

 

ちなみに前回の記事までは「殺菌」という言葉を使っていましたが、今回はウイルスの不活化という意味を含め、殺菌ではなく、消毒という言葉に統一しています。

本記事末尾の補足で、殺菌、消毒等の言葉の定義について解説しています。

 

15分動画解説

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オゾン消毒とは

オゾン消毒とは、オゾンを室内に放出し、室内を消毒するやり方です。

オゾンが室内に充満して、空気中や壁や物品表面の微生物を攻撃して消毒します。

そのとき、人体に有害なオゾン濃度になりますので、必ず無人の下で行います。

オゾン消毒のイメージ

 

CT値とは

消毒効果の指標としてはCT値というものが用いられます。そのまま「シーティーち」と読みます。

CT値はオゾン消毒の効果の指標として用いられますが、それ以外にもオゾン以外の消毒ガスや、オゾン水による消毒の際でも用いられる考え方です。

 

CTとはConcentration(濃度)とTime(時間)の頭文字です。単位としてはppm・minが良く用いられます。つまり、何ppmで何分さらしたかというオゾン濃度と時間の掛け算の値です。

これはつまり、オゾン消毒にはオゾン濃度と時間の2つの要素が重要であるということを意味しています。

 

ここで注意していただきたいのが、オゾン消毒の効果というのはCT値以外に湿度も大きく関係してくるということです。湿度が高いほど消毒効果が高くなりますので、実際の消毒の際には加湿器などで、加湿を併用していただきたいと思います。

オゾン消毒を行う際の部屋の湿度は、65%R.H.以上が目安です。

〈参考:ppmについて詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ〉

【単位解説】初級編「10分でわかるオゾン濃度ppmの意味」(動画解説)

CT値の計算

CT値計算の例(1ppm×1時間の場合、CT値は60)

このグラフはCT値計算の例です。縦軸がオゾン濃度で、横軸が経過時間です。例えば室内のオゾン濃度を1ppmにして1時間、つまり60分間保持した場合に、CT値というのはこの水色の部分の面積にあたります。1×60で、60ppm・minとなります。

 

次は、実際の試験結果と照らして考えてみましょう。

森林ホテルさんでの試験結果

以下の写真は、当社の近隣にある森林ホテルさん(東武東上線 森林公園駅から徒歩1分)のツインルームでの試験の様子です。

森林ホテルさんでの試験開始時の様子

こちらで試験を行わせていただきました。

室内の体積は50m3です。使ったオゾン発生器は当社の製品「爽太くん」(ED-POG-3TM)で、そのオゾン発生量は500mg/hです。1時間運転して、その後2時間静置しました。

 

すると、こんなグラフになりました。

ツインルーム内オゾン濃度の時間的変化とCT値

縦軸にオゾン濃度、横軸が経過時間です。0のところでスイッチが入りまして、徐々にオゾン濃度が上がっていきます。最終的に1.4ppm前後にまで到達しています。1時間後にタイマーが切れてオゾン濃度が下がっていきます。

最終的に、この水色の部分の面積がCT値となります。今回は92にまで達しています。

 

では、この92というCT値はどれくらいの消毒効果があるのか、ということで次の節では実際に使われるCT値の指標や試験データの例を参考にしてみたいと思います。

 

CT値の指標と試験データ

CT値(ppm・min)指標や試験データ
60
(例:1ppm×1時間)
・食品、飲料工場の夜間消毒運用値
・救急車の消毒運用値
・新型コロナウイルスを90~99%不活化1)
・日常的な消毒運用値としての当社推奨値
92・森林ホテルさん ツインルームでの試験結果
330・新型コロナウイルスを99.9~99.99%不活化1)
3,000・インフルエンザウイルスを99.999%不活化2)
6,000・リネン類(シーツなど)の消毒運用値3)
24,000・製薬工場クリーンルームの消毒運用値
不活化のデータについて
いずれも実験室におけるデータであり、また詳細な試験条件もそれぞれ異なる可能性がありますので、実用上確実に不活化できることを示しているわけではありません。

 

引用文献

  1. 公立大学法人奈良県立医科大学, 一般社団法人MBTコンソーシアム. (世界初) オゾンによる新型コロナウイルス不活化を確認. 奈良, 奈良県立医科大学, (2020-05-14). http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf
  2. 田中浩, 櫻井美栄, 石井浩介, 松澤克明. インフルエンザウィルスのオゾンガスによる不活化. IHI技報. 東京, IHI, (2009), 49 (2), pp. 74-77. https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/e2169532bf5ca7d535e36dc560e147f8.pdf
  3. 一般社団法人日本病院寝具協会 寝具研究委員会. 寝具類の消毒に関するガイドライン, 7版. 東京, 一般社団法人日本病院寝具協会, (2019-10-15). http://www.nbsk.net/wp/wp-content/uploads/8136834c1472bb5c68ca90f1a8558aa11.pdf

CT値のデータの読み方

まずは表の一番上の60ppm・minという数値ですが、これは先ほどの例でも出したように1ppm×1時間を意味しています。分かりやすいので指標にされやすい値です。

実際に、このあたりのCT値から現場において明確な消毒効果が現れてくるという数値となっています。当社でも食品、飲料工場の夜間消毒などでこの数値を指標としています。

2020年5月には、奈良県立医科大学さんがこのCT値60という値で、新型コロナウイルスを90~99%不活化したというプレスリリースを発表しています。更にCT値が330になると99.9~99.99%不活化したということです。

 

当然、CT値が大きくなればなるほど消毒効果は高まっていきますが、実際にはそれにかけられる時間と業務との兼ね合いや、費用対効果、オゾンによる物品の腐食劣化などのマイナス面などを踏まえて、現実的な数値で運用されています。

CT値6000を超えるような運用値は、カビとか芽胞菌と呼ばれる強力な菌をも見据えた指標となっています。ただ、当社としては、食中毒菌や病原性ウイルスなどをターゲットとした日常的な消毒の指標としては最低限60以上を目指すのが現実的と言えるのではないかと考えています。

 

ただし、この推奨運用値での消毒は感染リスクを軽減するだけであり、絶対に感染が起こらないことを保証できる数値ではないことはご理解いただければと思います。

 

補足:「殺菌」およびそれに類する言葉の意味、定義について

専門的には、殺菌およびそれに類する言葉の意味、定義は以下とされています。日本薬局方の定義等を噛み砕いて記載しています。

  • 殺菌:
    対象物中の微生物を殺すこと。何%殺すという数量的な定義は特にない。
  • 滅菌:
    対象物中の全ての微生物を殺す又は除去すること。数量的には100万分の1まで(99.9999%)殺滅させることとする。
  • 消毒:
    人や動物に対して病原性のある微生物を殺すこと。
  • 除菌:
    微生物を減らすこと。

 

また、消毒の中にも段階があり、CDC(Centers for Disease Control and Prevention:アメリカ政府の疾病対策予防センター)によれば以下の段階があるとされています(日本オゾン協会発行『オゾンハンドブック』による)。

  • 高水準消毒 High-level disinfection:
    芽胞が多数存在する場合を除き、すべての微生物を死滅させる。
  • 中水準消毒 Intermediate-level disinfection:
    芽胞以外の結核菌、栄養型細菌、多くのウイルス、真菌を殺滅する。
  • 低水準消毒 Low-level disinfection:
    ほとんどの細菌、ある種のウイルス、真菌は殺滅するが、結核菌や芽胞などを殺滅しない。

オゾン消毒に期待されるのはこのうちの、中水準消毒および低水準消毒の領域であると言えます。

 

森林ホテルさんのWebサイトはこちら!
https://shinrin-hotel.com/

 

(2020年8月27日:奈良県立医科大学さんによるプレスリリースのURLが変更されたため、記事中リンクを更新しました。)

(2020年8月25日:ppmの解説記事へのリンクを追加しました。)