🔰 オゾン・塩素初心者向け 🍀
この記事はオゾン・塩素初心者の方向けです。
エコデザインの長倉正始です!
ご縁があり、奈良県立医科大学教授の矢野寿一先生にリモートでインタビューをさせていただきました。
感染症の専門家の方から見てオゾンとはどんな存在なのか? オゾンについてどう思われているのか? 効果は? 気になることを聞かせていただきました。とても興味深い内容になりました!
(インタビュー日:2021年2月17日)
矢野寿一先生のご紹介
矢野先生は、東北大学、仙台医療センター、奈良県立医科大学で微生物学や感染症学について研究されてきた方です。現在の肩書は奈良県立医科大学 微生物感染症学講座 教授となっています。
(公社)生命科学振興会の理事や、日本化学療法学会の幹事としても活動なさっています。
個人的にお付き合いのある古家仁先生(*)にご紹介いただき、今回の矢野先生へのインタビューが実現しました。古家先生その節はありがとうございました。
それでは、インタビューをご覧ください!
(*)前 奈良県立医科大学附属病院長(2012年~2020年)。
生い立ちと研究内容
実家を継ぎたくなかった
本日はお忙しい中、ありがとうございます。新型コロナ時代のオゾンの使い方ということで、新型コロナウイルスについて色々と実験されていた矢野先生にいろいろお話を伺いたいと思いまして、今日行わせていただきます。
矢野先生は色々メディアにも出られていて有名ではないかと思うのですけど、矢野先生のことをもっと知りたいという方のために、まず矢野先生がどういった方なのかをお伺いしたいと思います。矢野先生の生い立ちやこの世界に入ったきっかけなど、そういった経歴について簡単に教えていただいてもよろしいでしょうか。
長倉正始
矢野先生 広島県尾道市というところで生まれまして、途中色々なところへ行ったんですけど、広島の私立修道高等学校を出まして、長崎大学の医学部に入学しました。
その医学部に入られたのは、何かもともと医学に興味があったりとか、そういったことはあったんでしょうか。
長倉正始
矢野先生 実家の家業を継ぎたくなかったんです。
長倉正始
矢野先生 もともと、父の兄弟はほとんど医師で、おじいちゃんも医師で医者家系だったので、医学部に行けば(家業を継ぐことを)見逃してくれるかなと思って(笑)
長倉正始
本当の専門はウイルスよりもバクテリア
長倉正始
矢野先生 卒業して最初は耳鼻科の教室に入局したんですけれども、そこで大学院に進学することになって。その時に、この耳鼻科の分野で感染症をしている人が非常に少ないということもありまして、当時の耳鼻科の教授から感染症を勉強してこいということで、北里大学に国内留学するみたいな形で勉強しに行きました。
そこでちょっと研究にハマってしまったところがありまして。ただ、北里大学の微生物学はウイルスが専門ではなくて、バクテリア、細菌のほうが専門だったんです。そこで、菌のほうの勉強をしたというところです。
そのあとまた長崎大学に帰ったんですけども、その時の教授が東北大学に行くとこになりまして、私も一緒に行くことになりました。でも、大学院時代の研究の楽しさが忘れられなくて、それからは研究を主な仕事としてやるようになりました。今から15年ぐらい前のことです。
※バクテリアと細菌は同じ意味です。真菌は異なります。
医師に最初はなろうとしたけれど、それがだんだん微生物学というか、細菌の研究のほうに興味が移っていったという感じですね。
長倉正始
矢野先生 そうですね。
今現在、矢野先生の専門分野はどういったことになるのでしょうか。
長倉正始
矢野先生 今はこういったご時世ですので、新型コロナウイルスについて、いろいろな不活化の検証を実施しているところです。
ですけども、本来は先ほど申し上げた北里大学の微生物学教室では細菌、バクテリアのほうが専門で、私も、そこで菌について一から勉強したっていうのもありまして。今でも本当はバクテリアのほうが専門なんです。特に耐性菌といって、抗菌薬、抗生物質が効かなくなった細菌はどうして抗生物質が効かなくなるのか、それを解析するっていうのが私の本来の専門です。
耐性菌と抗生物質
耐性菌というのはざっくり言うと、どんなものなんでしょうか。
長倉正始
矢野先生 皆さんがお医者さんに行ったらよく抗生物質を処方されると思うんですけども、そうした抗生物質が効かなくなったり、あるいは効きにくくなったり、そうなった細菌のことですね。
耐性菌は、なぜそういう耐性を獲得してしまうんでしょうか。
長倉正始
矢野先生 やはり、一つは抗生物質が不適切に使われることです。それによって細菌が抗生物質に暴露されて、そのうち抗生物質に対して抵抗力を持ったものが少数ながら生まれてきます。一方で抵抗力を持っていない細菌は、その投与された抗生物質でどんどん死滅していきます。なので、最終的に生き残るのが耐性菌ということになります。
原因としては、抗生物質を使うことによって起こるということです。
長倉正始
菌が生み出す抗生物質と、人間が作る抗菌薬
矢野先生 抗生物質を使わなくても、もともと耐性菌っていうのはいるんですね。菌同士とかカビとかも生存競争に勝たなきゃいけないので、いろいろな細菌とか真菌がもともと自ら抗生物質を作っていて、別の菌を殺して自分たちは生き残ろうとする作用もあるんです。
それを利用して人間が抗生物質を使うようになりました。もともとの耐性菌は、ある程度そうやって別の菌と対抗するために存在していたわけなんですけども、抗生物質を人間が使うことによって、耐性菌と耐性菌でない菌の割合というか、バランスが崩れちゃったというのが今の現状ではないかと思います。
なるほど。耐性菌ができない抗生物質っていうのはあるんでしょうか。
長倉正始
矢野先生 今のところはないと思います。
そうですか。人間の使う基本的な抗生物質というのは菌とかを利用して作るっていうのがほとんどですか。
長倉正始
矢野先生 抗生物質っていうのは、もともと生物が作ったものが本来の定義です。今では工場で化学的に合成することができるようになったので、最近は専門的にはそれを抗生物質とは言わずに抗菌薬というふうに呼んでます。
ただ、一般の方々には抗生物質のほうがたぶん耳に馴染んでられると思うので、普通に使うときは抗生物質と呼んだりしてます。科学的には抗生物質ではないんですけども。
そういうことですね。化学的に合成した抗菌の物質というものがあるということですか。
長倉正始
矢野先生 そうですね。化学的に合成したものを抗菌薬と呼んでます。
そういうことですね、なるほど。では抗ウイルス薬というのは、これも化学的に合成したものでしょうか。
長倉正始
矢野先生 そうですね、はい。
ウイルスに対して生物が持つ防御力
大型の生物に対してウイルスというのは働くことが多いのですか。
長倉正始
矢野先生 大型じゃなくても、普通に小さな哺乳類でも感染します。植物に感染するウイルスもあります。ウイルスは生きた細胞があるところでしか生き残れません。
長倉正始
ウイルスと感染症対策
感染症対策の基本は手洗い! それは共通事項
MBT新型コロナ感染対策の研究結果について、奈良医大のホームページに載っていますよね。新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスなど他のウイルスと比較して、不活化といった面でどういった特徴があると思いますか。
長倉正始
矢野先生 構造的には新型コロナウイルスはインフルエンザウイルスと似たウイルスなんですけれども、インフルエンザよりも、例えば環境の中での生存期間は長いというふうな報告が多いと思います。
ただ、新型コロナを含むコロナウイルスには、インフルエンザと同じようにウイルスの一番外側にエンベロープという膜、脂でできた膜があります。エタノールだったり、界面活性剤や石鹸とかを使うと、この膜をすぐに分解してくれます。なので、感染症対策としてはしやすい面を持っているウイルスじゃないかと思ってます。
そうなんですね。では、インフルエンザウイルスについてはどうでしょうか。
長倉正始
矢野先生 インフルエンザウイルスは新型コロナウイルスと同じような構造で、インフルエンザも石鹸とかエタノールで分解されやすいですので、対策はしやすいんですね。
性質が異なる代表例はノロウイルスです。ノロウイルスは一番外側の膜(エンベロープ)がありません。なのでエタノールで分解されにくい、界面活性剤や石鹸でも分解されにくいということになります。そこで、ハンドソープ・石鹸でよく手を洗ってから水でよくすすいで物理的に手から離れさせる必要があります。物質の表面に付着している場合は、次亜塩素酸ナトリウムっていう消毒薬が必要になったりしますので、ノロウイルスはインフルエンザや新型コロナよりも感染症対策のしづらさがあるかと思います。
その他にも要因はあるのですが、ノロウイルスに比べれば、新型コロナやインフルエンザは、感染症対策についてはやりやすいウイルスの部類に入ると思います。
そういうことですね。確かにノロウイルスとかはトイレとかで、特にドアノブとかに触ったらそこから感染しやすいということを聞きますけど、エタノールだけでは感染を防ぐことがなかなか難しいわけですね。
長倉正始
矢野先生 そうですね。よく洗ってよくすすいで、物理的に流すしかないというところです。
そうなんですね。不活化させるというよりは、物理的に洗い流しちゃうと。
長倉正始
矢野先生 エタノールも多少は不活化してくれるんですけども、やはり効率がインフルエンザウイルスなどと比べると悪いです。また、次亜塩素酸ナトリウムはなかなか手に使うわけにはいきません。
一方で手洗いをしっかりすれば、エンベロープをもつコロナやインフルエンザだけでなく、エンベロープをもたないノロウイルスも落とせますので、そういった意味では、物理的によーく手を洗うというのが感染症対策の基本になるのかと思います。
免疫とウイルス
ここまで、いろいろな感染症対策について伺いましたが、そういったことを全然やらなかった場合にはどういったことが起きてくると思いますか。
長倉正始
矢野先生 結局、感染症というのは、微生物と宿主というか、われわれのその時の免疫状況というか、われわれが元気であるかに影響を受けます。われわれのほうが元気であればウイルスをもらっても発症しませんし、逆にものすごく弱い菌やウイルスでも、われわれが例えばステロイドを使ってたり、抗がん剤を使っていたりなどして免疫の力が落ちていれば、どんな弱い菌であっても感染して発症することがあります。
なので、何もしなくても強い人だったら感染を起こさないこともあると思いますし、逆に、特に今回の新型コロナなんかだったりすると、高齢者、基礎疾患のある人は危険だなと思いますし、それぞれのその人のその時その時の体調とか元気さによることになります。
そうですよね。今回、いろいろな国の感染者数とかを見てると本当にいろいろな要素が絡んでて、そういういろいろなことが今回のパンデミックによって本当によく分かったなという感じがしました。
長倉正始
矢野先生 そうですね。日本にはファクターXがあるんじゃないかっていう話もありますけど、まだは未だによく分からないですし。もしファクターXが分かったら感染症対策もまた一歩前進すると思うので、誰か早くファクターXの答えを見つけてくれないかなっていうふうには思いますね。
ファクターXとは
ファクターX:ここでは、日本において新型コロナウイルス感染症の重症者・死者が比較的少ない要因が何か存在しているのではないかという仮説のこと。未解明の因子。
これまで新型コロナウイルスを見てきて感じたこと
これまで新型コロナウイルスを見てきた中で、何か感じたことなど、何か読者へのメッセージをお願いします。
長倉正始
矢野先生 オゾンにしても、消毒薬にしても、やはり濃度と作用時間というのが重要になってきます。効果を出すには濃度と作用時間の両方のファクターが必要であるということを念頭に機器・薬品を使用していただければと思います。
オゾンであれば、有人環境を考えるとどうしても濃度が低くなりますけども、そのときはやはり長い作用時間が必要になってきます。ということは、濃度が低いまま短時間だとなかなか効きにくかったりするということです。あと世の中に結構いろいろとまがい物の感染症対策グッズだったり機器だったりが出てきていますので、正しい情報を選択し、正しい感染症対策をしていただければと思います。
100%の感染症対策はない
矢野先生 あと、感染症対策というのは「これをやっとけば100%」っていうのはありません。例えば我々の病院であれば、新型コロナに感染された方の退院後にその部屋をオゾンだけで滅菌するっていうのはありえなくて、基本はやはり手を使ってエタノールで拭いています。オゾンを使おうが使うまいが、病院の中のエタノールによる拭き取りが基本で、オゾンは補助的に使用しています。
100%の感染症対策っていうのは世の中ありません、それは病院でもそうですし、一般家庭でも市中のお店でもどこでもそうです。いろいろな対策を取ってできるだけ感染する機会、リスクを減らしていくという考えが大事だと思います。なので、例えばマスクをしたり、手洗いしたり、それぞれのご家庭や環境でできることをいろいろと組み合わせてできるだけリスクを減らしてください。それでも100%の感染症対策はできないんですけれども、それぞれでできることを組み合わせて、リスクを減らしていくということを考えていただければと思ってます。
ありがとうございます。弊社も基本の感染症対策はマスクと換気、手洗いとエタノール消毒です。オゾンなら万事解決、と言わんばかりの売り方をしている業者さんもあると思いますが、弊社エコデザインはオゾンについて詳しいからこそ、正しい場面でオゾンを使ってほしいと考えてます。
オゾンがそういった数ある感染症対策の中の一つのツールとして、より良い形で広められるように弊社も取り組んでいければと思います。
長倉正始
後編はオゾンとウイルスの関係についてのお話
ここまで、インタビュー前編では主に研究内容のお話と、新型コロナウイルスの特徴について語っていただきました。
後編では、オゾンとウイルスの関係についてのお話や、矢野先生の最新の研究成果である柿渋、藍、お茶とウイルスの関係についても語っていただいています。
後編は近日公開予定です。お楽しみに。
(インタビュー内容は取材当時のものです。所属、業務内容などは現在では変更となっている場合があります。)