【単位解説】初級編「10分でわかるオゾン濃度ppmの意味」(動画解説)

🔰 オゾン初心者向け 🍀
この記事はオゾン初心者の方向けです。

皆様お元気ですか、エコデザインの長倉正弥です。

この記事では、オゾン濃度の意味と単位について解説します。

 

まず最初にこの記事では「初級編」として、一番大事だと思われる「ppm(ピーピーエム)」という言葉の意味についてご説明します。オゾンについて調べているとよく出てくる言葉ですよね。

この「初級編」では、オゾンについて全く知識のない方でも一から理解ができるように、(動画版は10分で見れて、記事なら10分で読めて)できる限り分かりやすいように書くよう努めています。

 

その次に「上級編」として、オゾン濃度関連の全般についてより詳しく書く予定です。こちらは技術者や理系の学生さん、その他オゾンマニア向けを想定してややマニアックに書きます。

 

10分動画解説

記事の内容を10分間の動画で解説しています。

※動画の内容に一部誤記があったため、動画を差し替えさせていただきました。

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はじめに:オゾンガスのppmとオゾン水のppmは全く違う意味

オゾン濃度の単位としてのppmのことをお話しする際に、一番最初にお伝えするべきだと私が思っていることがあります。

「気体(主に空気)中のオゾン濃度としてのppm」と、「液体(主に水)中のオゾン濃度としてのppm」の意味は全く違うということです。

言い換えると、「オゾンガス濃度のppm」と「オゾン水濃度のppm」は全く違うということです。

ガスと液体で同じppmという言葉が使われるため、ごっちゃになってしまいやすいのですが、まるっきり違う数量なので是非ともお気をつけください。

違いの詳細についてはこれから述べていきます。

 

ppmとは

さて、ppmという言葉の意味は、parts per million(パーツパーミリオン)の略で、100万分率という意味です。100万分率と言われてもピンとこないと思いますが、日常的に良く使われる100分率つまり「(パーセント percent)」を思い出して頂くとわかりやすいかと思います。

100分率全体を100として、その中の割合を表す単位ですね。例えば5%であれば、全体の100分の5であることを意味しています。

 

これと同様に、ppm全体を100万として、その中の割合を表す単位です。例えば5ppmであれば、全体の100万分の5であることを意味しています。

 

このppmという単位は%と違い、日常に殆ど…、いや全く出てきません。なぜかというと、日常ではこのような少ない比率のことを重要視することはまずないからです。殆ど科学の分野でしか使われない言葉だと思って間違いないと思います。

 

体積比のppmと質量比のppm

ここで、気体中のオゾン濃度のppmは「体積比でのオゾン濃度です。一方で液体中のオゾン濃度のppmとは「質量(重量)比でのオゾン濃度です。そのように意味が異なります。

質量と重量
なお、科学的には重量と質量の意味は異なり、ここでは質量という言葉のほうがより適切です
 
本稿ではこれらを区別せず、重量=質量としています。上級編ではこの違いは明確にする予定です。

 

体積比と質量比とはつまりどういう意味なのでしょうか。それぞれ以下にご説明します。

 

体積比のppm

体積とは縦の長さ×横の長さ×高さの長さで測られる、3次元の大きさであり、液体であればメスシリンダーや計量カップなどではかることのできる物質の量です。例えばm3(立方メートル、リューベー)、L(リットル)、mL(ミリリットル)などという単位で表される量ですね。

先ほど、1ppmとは100万分の1であるとお話ししました。ですので、1ppmというのは100万mL中の1mLと言うことができます。そして100万mLはちょうど1m3ですので、気体中の1ppmは1mL/m3と書き換えることが可能です。

つまり、1ppmの(空気中)オゾン濃度というのは、(比率として)1m3の空気中に、1mLのオゾンが紛れ込んだ状態ということになります

質量比のppm

質量は物の重さです。天秤や体重計等ではかられる物質の量で、例えばmg(ミリグラム)、g(グラム)、kg(キログラム)、t(トン)などの単位で表されます。

1ppmとは100万分の1ですから、1ppmというのは100万mgの中の1mgと言うことができます。そして100万mgはちょうど1kgですので、液体中の1ppmは1mg/kgと書き換えることが可能です。

つまり、1ppmのオゾン水濃度というのは、(比率として)1kgの水中に、1mgのオゾンが溶け込んだ状態ということになります

 

体積比のppmと質量比のppmはどのくらい異なるのか

ここで、気体中オゾン濃度の1ppmと、液体中オゾン濃度の1ppmで、同じ体積あたりのオゾンの量で比較した場合にどれぐらい違っているのかを計算してみましょう。これによって、気体中と液体中のオゾン濃度ppmがいかに違うのか良くわかります。

 

先ほど気体中のppmはmL/m3(体積/体積)と書き換えられ、液体中のオゾン濃度ppmはmg/kg(質量/質量)と書き換えられるとお話ししましたね。

ここでは、両者の比較を分かりやすくするために、どちらも同じ体積1000Lあたりに含まれるオゾンの質量(mg)で比較してみたいと思います。

 

まず、気体中のppmについてです。

オゾン濃度1ppmの気体1000L(=1m3)の中にはオゾン1mLが含まれています。
ここで、オゾン1mLの質量は約2mgです(この理由は上級編で解説します)。

よって、1ppmの気体1000Lの中にはオゾン約2mgが含まれています。

 

次に、液体中のppmについてです。
液体によって比重が異なりますので、水で比較します。

オゾン濃度1ppmの液体1kgの中にはオゾン1mgが含まれています。
ここで、水は1kgでほぼ1Lの体積となりますので、1ppmのオゾン水1Lの中にはほぼ1mgのオゾンが含まれています。

よって、これを1000倍すると、1ppmのオゾン水1000Lの中にはほぼ1000mgのオゾンが含まれています。

 

同じ1000Lの体積の中でも、気体の場合は2mgなのに対して、液体の場合は1000mgのオゾンが含まれることになり、同じ「1ppm」でも実際には約500倍の違いがあることが分かります。

 

オゾンガスの1ppmと比べると、オゾン水の1ppmは同じ体積中に約500倍のオゾン量があるということですね。

気体中のオゾン濃度と液体中のオゾン濃度には同じppmという言葉が使われるので紛らわしいものです。ですが、このように全然意味が違いますので、ごっちゃにしないようにお気を付けください。

コラム:pp○は他にも色々とある
ppm(parts per million パーツパーミリオン)だけではなく、pp○という単位には他にもあります。
 
ppmの次によく使われるのはppb(ピーピービー:parts per billion パーツパービリオン)で、これは10億分率を意味します。ppbはppmよりも更に低い濃度を表すのに使われます。残留してはならない薬品の検査などの場面で出てくる単位です。
 
他に、pphm(ピーピーエイチエム:parts per hundred million パーツパーハンドレッドミリオン)という単位があり、これはppmの1/100倍、ppbの10倍を表しています。JISの定める耐久性試験などで出てくる単位です。
 
0.0001% = 1ppm = 100pphm = 1000ppbです。

 

実際に使われるオゾン濃度の例

最後に、色々な場面で使われるオゾンの濃度の例についてまとめてみました。
タイムリーな話題として、ウイルスの不活化に関する文献データのオゾン濃度も太字で入れ込んでおりますので、合わせてご参考ください。

オゾンガスの10~20ppmとオゾン水の1ppmでインフルエンザウイルスの不活化効果を比較すると、かかる時間の長さからオゾン水の方が圧倒的に効果的であるということがよく分かります。
これは上でご説明した通り、同体積で比較した場合に、1ppmのオゾン水中にはオゾンガス濃度500ppmと同等のオゾン量が含まれているためです。

不活化のデータについて
いずれも実験室におけるデータであり、また詳細な試験条件もそれぞれ異なる可能性がありますので、実用上確実に不活化できることを示しているわけではありません。

 

気体(空気)中オゾン濃度の例

0.005~0.1ppm自然界の大気中オゾン濃度
0.025ppm8時間で大腸菌ファージウイルス99%不活化1)
0.1~1ppm脱臭によく用いられるオゾン濃度
1~10ppm食品工場などの夜間殺菌等でよく用いられるオゾン濃度
6ppm55分間で新型コロナウイルス99.9~99.99%不活化2)
10ppm3.5時間でインフルエンザウイルス99.99%不活化3)
20ppm2.5時間でインフルエンザウイルス99.999%不活化3)
10~100ppmリネン類(シーツなど)の殺菌によく用いられるオゾン濃度
100~1000ppm薬品工場のクリーンルームの滅菌などによく用いられるオゾン濃度

 

液体(水)中オゾン濃度の例

0.1~1ppm水(そのもの)の殺菌によく用いられるオゾン水濃度
0.612ppm30秒間でノロウイルス99.9999%不活化4)
1ppm1分間でインフルエンザウイルス99.9999%不活化5)
1~5ppm手洗い殺菌、食品・機器の殺菌などによく用いられるオゾン水濃度
5~50ppm半導体(ウェーハ)の洗浄などによく用いられるオゾン水濃度

 

引用文献

  1. 日本医療・環境オゾン学会会報. 大阪, 日本医療・環境オゾン学会, (2015), 22 (3).
  2. 公立大学法人奈良県立医科大学, 一般社団法人MBTコンソーシアム. (世界初) オゾンによる新型コロナウイルス不活化を確認. 奈良, 奈良県立医科大学, (2020-05-14). http://www.naramed-u.ac.jp/university/kenkyu-sangakukan/oshirase/r2nendo/documents/press_2.pdf
  3. 田中浩, 櫻井美栄, 石井浩介, 松澤克明. インフルエンザウィルスのオゾンガスによる不活化. IHI技報. 東京, IHI, (2009), 49 (2), pp. 74-77. https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/e2169532bf5ca7d535e36dc560e147f8.pdf
  4. 山崎謙治, 中室克彦. 低濃度オゾン水によるノロウイルスの不活化. 防菌防黴. 大阪, 日本防菌防黴学会, (2012), 40 (4), pp. 199-204.
  5. 中室克彦, 中田英夫, 市川和寛, 小阪教由, 山崎謙治. 低濃度オゾン水による新型インフルエンザウイルスの不活化効果の評価法. 防菌防黴. 大阪, 日本防菌防黴学会, (2012), 40 (8), pp. 485-491.
お詫びと訂正
IHI様の文献に基づくオゾンガスによるインフルエンザウイルスの不活化データについて、下記のように誤って掲載しておりました。ここに訂正し、心よりお詫び申し上げます。
 

10ppm:3.5時間でインフルエンザウイルス99.999%不活化3) 10ppm:3.5時間でインフルエンザウイルス99.99%不活化3)
20ppm:2.5時間でインフルエンザウイルス99.9999%不活化3) 20ppm:2.5時間でインフルエンザウイルス99.999%不活化3)

 

まとめ

この記事では、オゾン濃度の単位ppmの意味について以下の要点を踏まえて解説しました。

  • ppmはparts per millionの略で、100万分の1の意味
  • オゾンガスのppmは体積比
  • オゾン水のppmは重量比
  • 1ppmのオゾン水には、同じ体積の1ppmのオゾンガスに比べて約500倍の量のオゾンが含まれている

オゾン濃度についてのより詳しい情報については、「上級編」を執筆予定ですのでお楽しみに。

 

(2021年3月9日:体裁が崩れていた箇所を修正しました。)
(2020年10月1日:オゾン初心者向けマークを記事に付与しました。)
(2020年8月27日:奈良県立医科大学さんによるプレスリリースのURLが変更されたため、記事中リンクを更新しました。)
(2020年7月13日:動画を修正版に差し替えました。)
(2020年7月2日:記事中の誤記を訂正しました。)
(2020年6月16日:動画とPDFを追加しました。)