【オゾン試験】廃水をオゾン処理によって脱色・脱臭する(動画あり)

オゾン研究所【オゾン試験】廃水をオゾン処理によって脱色・脱臭する

エコデザインのサイトウです。今回は、生活排水にオゾンをバブリング(吹き込み)し、脱色・脱臭を行ってみました。

 

実験の背景

日頃から当社では、下水処理水、畜産廃液、中水などについて、「排水基準はクリアしているのだが、色やニオイが抜けない。オゾンでそれらを取り除けないか」とのご相談を受けています。オゾンには脱色、脱臭効果があるからです。

オゾンを使った小規模実験の提案や現地訪問などを経てから、適切なオゾン投入量や各種試験条件を相談・決定し、提案を行っています。

今回は、社内で得た廃水処理水(社内の浄化槽からの放流水)を使って、オゾンによる脱色・脱臭の効果の検証を行ってみました。また、投入したオゾンがどの程度反応して消費されるかを合わせて検証しました。

 

実験方法

試験系統図

試験系統図(クリック・タップで拡大します)
※適宜、系統中の流量計・バルブなどは省略しています

試験手順

STEP 1.
酸素処理系統とオゾン処理系統を用意する
オゾンガスの発生源には酸素ボンベを用います。
 
今回は、酸素ボンベから直接酸素ガスをバブリングする系統と、オゾン発生器を通してオゾンガスをバブリングする系統をそれぞれ準備しました。2つの系統に同時に同じガス流量で吹き込むことで、酸素処理とオゾン処理との比較を行います。
STEP 2.
系統中の装置を準備する
オゾン処理側の系統の装置のセッティングを行います。必要な濃度を得るための出力の調整、濃度計の暖機運転など。
 
オゾン処理系統のオゾン濃度計は、入口側と出口側に同じ濃度レンジのものを設けることで、オゾン処理前後でオゾン濃度がどの程度変化しているかを確認します。
STEP 3.
酸素ガスを流しつつ、流量を調節する
酸素ボンベから酸素ガスを流します。この時点ではどちらの系統とも酸素ガスが流れている状態です。流量を調節し、目的の流量にします。
STEP 4.
漏洩がないか確認する
事故防止のため、オゾンを発生させる前に、試験系統中からガスや試験サンプルの漏洩が起こっていないかの最終チェックをします。
STEP 5.
試験開始:オゾン発生を開始する
オゾン発生器の電源を入れ、オゾン処理系統へオゾンガスを流し始めます。厳密にはオゾン含有酸素ガスが流れます。
 
実際の曝露試験では、予めスタンバイ系統を用意しておき、そちらで細かな濃度・流量の調節を行い(あるいは制御を行い)、目的の濃度・流量条件が確実に得られていることを確認してから、本系統へ切り替え操作を行う場合が多いです。
STEP 6.
処理後のオゾンは分解する
オゾン処理系統の末端には、予めオゾン分解器を接続しておきます。オゾン分解器には、オゾン分解に適した触媒が詰められています。これにより、オゾンは完全に酸素に分解されるため、大気開放ができます(試験サンプルの成分にもよる)。
STEP 7.
目的が達成されたら、オゾン発生を停止する
目的(今回は脱色・脱臭)が達成されたら、オゾン発生器を停止します。
 
その後はそのまま酸素ガスを暫く流し続け、系統中のオゾンガスを追い出します。残ったオゾンは濃度計の数値によって確認できます。
STEP 8.
試験終了
問題なければ、試験を終了します。適宜、系統を解体します。

使用装置

  • オゾン発生器…ファボゾン5 FOG-AC5G
    オゾンガス発生量:最大5g/h、オゾンガス濃度:最大70g/m3(N)以上、メーカー:エコデザイン株式会社
  • オゾン濃度計…PG-620H
    紫外線吸光式、メーカー:荏原実業株式会社
  • オゾン分解器…ED-MD9-500S
    酸化マンガン触媒(パラジウム添加)、メーカー:エコデザイン株式会社、触媒メーカー:株式会社キャタラー
  • 酸素ボンベ
    普通純度 >99.5%

 

実験結果

試験開始から1分程度経過すると、オゾン処理中の試験サンプルは既に目視でも色が少し薄くなってきているのが分かる程度に脱色されてきました。2分程度経過すると、さらに色が薄くなりました。3分30秒程度経過すると、ほぼ透明となりました。

試験終了後、オゾン処理後の試験サンプルのニオイが薄くなっていることも確認できました。

廃水のオゾン処理試験 入口濃度・出口濃度の推移
入口濃度・出口濃度の推移グラフ(クリック・タップで拡大します)

 

考察

社内で得た廃水(浄化槽からの放流水)において、オゾン処理による脱色、脱臭の効果があることが確認できました。また、同じ時間の酸素処理では同様の効果は見られませんでした。

廃水への投入前後で、オゾンガス濃度に大きな差はありませんでした
このことから、オゾンは廃液中で反応しやすい成分のみに作用している可能性があります。そして今回の実験において、それは色素・臭気成分であると考えられます。

このことより、脱色や脱臭のみの用途であれば、比較的少ない投入オゾン量で効果が期待できる可能性が示唆されます。

なお、この色素成分は恐らく胆汁色素のビリルビンであると思われます。

 

(2020年2月20日:実験の背景、考察に加筆を行いました。)